よくある質問 Q&A
- 狭心症とはどんな病気?
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健康な心臓は心臓が要求する血液(酵素)を充分供給されています。しかし何らかの原因(多くは動脈硬化による冠動脈狭窄)で供給が不足してしまい、胸部症状を発症する場合を狭心症といいます。一般的に外来で見られる狭心症は以下の3つです。
- 1)労作性狭心症
- 安静にしているときは何ともないが、運動などの心臓に対する負荷の増加によって症状が出現する
- 2)異型狭心症
- 血管が収縮又は痙攣することによって症状が出現する(日本人に頻度が高く、明け方に起こることが多い)
- 3)不安定狭心症
- 症状の頻度・程度が増悪している
なかには弁膜症が原因で狭心症症状が見られる場合もあります。
- 狭心症発作はどんなときに起きる?
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動脈硬化による狭心症は、過度の運動、緊張や興奮、ストレス、寒い環境、食後、飲酒時、排便排尿時などがきっかけになることがあります。また前述した異型狭心症のように特別な誘因がない場合もあります。
- どのような痛み?
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症状は患者様個人々々で表現が異なりますが、”左胸が抑えられるような”という訴えが一般的です。ほかにも”重苦しい”、”絞めつけられる”、”モヤモヤする”などの場合もあります。ただし症状が右胸や背中、あるいは首やあごや左肩に自覚されることもありますし、高齢者や糖尿病をお持ちの方は症状が出ないこともあります。また、肝心なことですが次のような症状の場合には狭心症の可能性は低いです。
- ・チクッとする、ズキッとする一瞬の痛み(持続時間が数秒くらい)。
- ・息を吸うと痛みが出る。
- ・体をねじると出現ないし悪化する胸痛。
- ・何時間(あるいはそれ以上)も症状が持続する。
ただしこの場合、心筋梗塞の可能性は否定できません。
- 発作が起こったらどうすればいいの?
- すでに狭心症の診断・治療を受けた方はニトログリセリンを使用してください。ただ、ニトログリセリンで症状が無くなった場合は狭心症発作の可能性が高くなります。場合によっては、状態悪化のサインの可能性もありますので、速やかにかかりつけ医か循環器専門医に相談してください。初めての発作は判断が難しい場合が多いです。放置しても症状は消失することが多いので、正確な診断をつけるための受診を怠りがちになります。発作が起こったら早めにご相談ください。
- 外来でどうやって診断するの?
- 外来では必ず心電図をとりますが無症状時の心電図では狭心症の診断は不可能です(多くの人間ドックの心電図がそうです)。肝心なのは問診で狭心症の存在を疑うことです。狭心症が疑われる場合は以下のような検査を患者様の状態に応じて実施し診断確定に導きます。
- ・運動負荷試験
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最も一般的です。プログラムされた運動負荷を心電図をモニターしながら実施します。ただし足腰に疾患がある方は不可能です。感度(正確に診断できる確率)は7~8割前後です。
- ・心筋シンチ
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アイソトープを注射して行うものです。大掛かりな装置を持つ大学病院などで実施されています。運動負荷試験と心筋シンチを組み合わせた運動負荷心筋シンチという検査は詳細な心筋の状態を把握することが可能です。感度は8割前後です。
- ・特別な造影CT
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すべてのCT装置が可能なわけではありません。同時に多スライスの画像が得られるCTにて(当院にも導入されています)実施します。ただし造影剤に対してアレルギーがある方、脈の早い方、不整脈が顕著な方は検査できません。
- ・ホルター心電図
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通常の生活をしながら24時間分の心電図を記録して、虚血(血流量の低下)による心電図の変化や不整脈を記録します。上記の検査ができない方に実施します。
- 狭心症あるいは狭心症の疑いが濃厚と診断されたら?
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診断を確定するため冠動脈造影という検査を2~4日間の入院で実施します。冠動脈の枝のどこがどのくらい細いのか、どこが閉塞しているのかといった治療方針を決める上で重要な情報を得ることができます。カテーテルと呼ばれる細い管(直径1,3~2,0mm)を使って冠動脈に造影剤を直接注入してその様子をレントゲン撮影します。カテーテルを挿入する部位は手首、肘、足の付け根があり、患者様の状態で決定します。また前述した異型狭心症の診断にも有効です。この場合は冠動脈の痙攣誘発の薬物負荷を行います。
- カテーテルの治療はどのようなもの?
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事前に得られた冠動脈造影の所見をもとに、カテーテルを通して風船で狭窄部分を拡張したり、ステントと呼ばれる金属製の筒で補強したりします。ほかに動脈硬化のかすを削り取ったりする方法もあります。もちろん状況によっては冠動脈バイパス手術を選択することもあります。
- 急性心筋梗塞とはどんな病気なの?
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冠動脈が閉塞することによって心臓に血液が行き渡らなくなることによって筋肉細胞が壊死してしまう状態です。狭心症との決定的な違いは、心筋梗塞の場合は心筋細胞が壊死してしまう疾患ということで、当然生命の危機、合併症、入院期間にも差が生じます。また急性期の治療の成否が患者様の生命、生活レベルを左右する疾患です。心臓のポンプ機能の低下による心不全、致死的不整脈、心破裂、血栓症(脳梗塞の原因になりうる)などに陥ることがありうる病気だという認識が必要です。現在早期治療を受けることができた症例の死亡率は5~8%とされています。
- 急性心筋梗塞と狭心症の症状の違いは?
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急性心筋梗塞では多くが前胸部痛を訴え狭心症と同様ですが、その痛みの程度や持続時間は狭心症の場合よりも重篤な場合が多く、”焼け付くような痛み”、”押さえ込まれるような痛み”などと表現されます。持続時間も30分以上続き、狭心症発作の薬(ニトログリセリン)も効かないことが多いのです。前胸部痛の他にも狭心症と同様に顎や喉、左肩などに放散痛として現れる場合があります。ただし注意しなければならないのは必ずしも典型的な症状を呈するわけではないということです。糖尿病を患っている方や心筋梗塞の位置や範囲によっては、必ずしも胸痛を伴わないことがあります。また消化器症状で発症する場合もあります。また、”急性心筋梗塞は狭心症に引き続いて発症する”と多くの方が認識されているようですがこれは誤りです。急性心筋梗塞は突然襲ってくる病気で、それ以前に狭心症発作がある場合はむしろ少ない(25~30%程度)です。
- どのようにして診断するの?
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急性心筋梗塞の診断、治療は一刻を争います。まず心電図をとります。これでほとんどの症例は診断がつきます。しかし、心電図のみではっきりした診断がつかない場合は、緊急血液検査を実施します。また、心臓超音波検査にて心臓の動きを検査して診断の一助にする場合もあります。中には、いかにも心筋梗塞のような症状を呈する別の疾患があります。その場合はさまざまな検査(胸部X線写真・CT検査・心臓超音波など)で、正確な診断を行います。
- 診断した後の治療は?
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急性心筋梗塞の場合は全例カテーテルを用いて冠動脈造影が行われます。冠動脈のどの部分が閉塞しているのか、その閉塞部分の長さはどのくらいか、心筋梗塞に関与していない狭窄はあるかなどを調べます。情報が得られたらそのまま治療へ進みます。急性心筋梗塞の治療は時間との勝負です。発症後すぐに閉塞した血管を開通させる治療を行えば心筋の壊死を最小限で抑えることができるのです。冠動脈内に血栓(血のかたまり)が見られた場合はカテーテルで吸引もしくは破砕する方法もとられます。上記の方法で血栓がなくなっても大抵の場合は冠動脈が狭窄していることがほとんどで、その場合は冠動脈形成術が行われます。その中でも一般的なのが、風船を用いて細い血管を拡張する治療と、金属のリングを植え込むステント治療です。その後は病状に応じたリハビリテーションを行い退院を迎えます。入院期間は7~14日間が一般的です。
- 予防はできるの?
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動脈硬化を抑制するような日常生活(生活習慣病の改善)、投薬が重要です。残念ながら完全に予防する方法はありません。また遺伝的に動脈硬化疾患を来しやすい方もいます。しかし以下の項目に注意していただければそれなりの効果が期待できます。
- 〈日常生活〉
- ・適切な食事
- ・アルコールを控える
- ・適度な運動
- ・禁煙(たばこは百害あって一利なし!!!)
- ・ストレスの緩和
- 〈以下疾患の適切な投薬、治療〉
- ・糖尿病
- ・高脂血症
- ・高血圧
- 狭心症や心筋梗塞に合併しやすい疾患は?
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動脈硬化性疾患が一般的に合併しやすいです。とくに下肢の動脈硬化疾患は7~8人に1人の割合でみられます。”歩行時のふくらはぎの痛み”が特徴的な症状ですが、脈波測定(当院でも実施しています。)で簡単に検査ができます。もっとも恐ろしいのは動脈硬化が末梢までびまん性に進行して足が壊死することです。もし足の動脈に動脈硬化性病変が存在した場合は、カテーテル治療、投薬治療が必要になる場合があります。当院でも積極的に検査・治療を実施していますので、お気軽にお問い合わせください。